The Valuebooks
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Japan Bookstore Landscape
The Valuebooks — Market Intelligence No.02

日本の書店深掘り。
20年で 半減した町の本屋 と、
年100店 生まれている独立系書店

書店数の時系列・無書店自治体・チェーンの再編・独立系リバイバル・シェア型書店・業界の構造問題までを一枚に。「書店は絶滅する」は半分正しく、半分間違っている。

Date2026-04-20 SourceJPO / 出版科学研究所 / JPIC / 経産省 / 各社IR / 業界メディア Scope日本国内 2000s〜2024
書店総数(2024)
Total Bookstores
10,417
2003年ピーク比 ▲50%
年間閉店数
Store Closures / yr
537
新規57店の約10倍
無書店自治体
Bookstore-less Cities
27.9%
村は86.2%が無書店
独立系 新規開業
Indie Store Openings
106店/年
2023年実績、2024年も90店
シェア型書店
Shared Shelf Stores
132
全47都道府県に分布
01 Timeline — Stores Down by Half

2003年にピーク約2.1万店あった書店は、2024年には 10,417店 に。月平均 32.7軒 のペースで閉店が続く。新規開店は年57店、閉店は年537店 — 開店1に対して閉店約10 の純減構造。

書店総数の推移(2003-2024)

出版科学研究所 / JPO集計

※ アルメディア集計・JPO集計で基準が異なる。広義のJPO登録書店数を基準とした時系列。2003年ピーク値は出版科研公式値。

新規開店 vs 閉店(2024年度)

JPO書店マスタ / 2024年3月時点
New Openings
57
新規開店
Closures
537
閉店

2023年度は新規94店 vs 閉店656店、純減562店。開店1対閉店10 の構造は2020年以降一貫。

店舗面積の大型化
平均 132.7
1,000坪以上 90店、300坪以上 976店。中小書店が閉店し大型店が残る 構造。
JPO書店マスタ管理センター 出版科学研究所 アルメディア 日販・トーハン統計
02 Regional Gap — Where Have the Bookstores Gone

全国1,741自治体のうち 482市町村(27.9%)が無書店。書店1店以下の自治体は 47.7% に及ぶ。沖縄・長野・奈良は過半の自治体で書店ゼロ、広島・香川は100%有書店。村の86.2%は書店ゼロ

書店ゼロ率 ワースト

都道府県別・無書店自治体比率(2024年8月 JPIC)

  • 1. 沖縄県56.1%
  • 2. 長野県53.2%
  • 3. 奈良県51.3%
  • 4. 和歌山県要確認
  • 5. 福岡県要確認

完全網羅

全自治体に書店がある都道府県

  • 広島県0%
  • 香川県0%
  • 以下2県のみ

人口10万人あたり書店数では徳島・福井・島根が上位。四国・日本海側は濃く、九州南部・東北は薄い 地理的偏在。

自治体規模別の書店ゼロ率

2024年8月 JPIC調査
市(815市中25市)3.0%
町(743町中295町)39.7%
村(183村中162村)86.2%
区(東京23区ほか)0%
書店ゼロの市の例

北海道 芦別市・赤平市・歌志内市、茨城 かすみがうら市・つくばみらい市、千葉 袖ケ浦市・白井市、埼玉 白岡市、新潟 妙高市など計24市・15道県

VB視点

無書店自治体の拡大は 宅配買取の地理的需要を生む。だが同時に、地方での「本との接点」自体の縮小=買取供給源の先細りでもある。

03 Chains — Winners and Strugglers

紀伊國屋書店は 3期連続過去最高、丸善CHIも安定。TSUTAYAは 年100店超の閉店、文教堂は事業再生ADR実施。勝ち組と再建中の二極化が進む。

紀伊國屋書店

2025/8期 / 非上場 / 海外展開強い
売上
1,407億円
前期比
+4.1%
店舗数
国102 / 海外47

3期連続で過去最高売上・最高益。旭屋書店を完全子会社化。海外(米・豪・シンガポール等)が牽引。法人外商・学術・英語書籍に強み。

丸善CHIホールディングス

2025/1期 中間 / 上場 3159
中間売上
327億円
店舗数
111
親会社
DNPグループ

丸善・ジュンク堂・文教堂系列を統合。図書館1,826館・大学研究機関の外商事業が安定収益。書店単体の営業利益率は薄いがグループ全体は好調。

TSUTAYA/蔦屋書店(CCC)

非公開(MBO後) / 書店はFC中心
店舗数
約800
ピーク比
▲20%
2024年閉店
110+

ピーク約1,000店→現在約800店。DVDレンタル市場の消滅が直撃。一方で直営16の蔦屋書店は書籍単体売上 前年比+4%と堅調 — 書店業態としては生きているが、フランチャイズ網は急速に縮小中。

文教堂GHD

2022/8期 / 上場 9978 / 事業再生ADR
営業利益
0.52億円
2019-2022閉店
62
状況
債務超過解消

事業再生ADR実施で上場維持。債務超過を解消したが収益力は回復途上。郊外駅前立地の縮小継続。

未来屋書店(イオン系)

非公開 / GMS併設 約241店

イオンモール集客に依存。紙書籍市場縮小の影響を直接受ける業態だが、親会社イオンの安定収益下で店舗網を維持。

くまざわ書店 / 有隣堂 / 三省堂 / 精文館

地域・業態特化の中堅チェーン

くまざわ書店は全国3位の約240店(非公開)、有隣堂は関東で約40店でYouTube発信が独自色、三省堂は神保町本店建替中(2025年完成予定)、精文館は愛知中心で約50店。大型チェーンと独立系の中間で差別化模索中。

著名閉店事例(直近3年)
  • ◎ 八重洲ブックセンター本店(2023年3月) — 44年の歴史、再開発で閉店。2024年6月グランスタ八重洲店で小型復活
  • ◎ 三省堂書店 神保町本店(2022年閉店) — 建替中、2025年新ビルで再開予定
  • ◎ 渋谷ブックファースト、銀座教文館、リブロ系 — 撤退・縮小が続く
04 Indie Revival — 100 New Openings Per Year

新刊書店が年間500店減る一方、独立系書店は 年間100店前後の新規開業が3年連続。2023年+106店、2024年+90店、2025年上半期+52店。JPOが2024年から独立系データ収集を開始、業界自体が「別枠で数える必要がある」と認めた転換点。「絶滅どころか増加」の反直観的ナラティブ。

独立系書店 新規開業数の推移

BOOKSHOP LOVER 和氣正幸氏集計

※ 取次を経由しない零細独立店はJPO書店マスタでも捕捉されない。実数はさらに多いと推測。

ナラティブの転換

JPO 2024年独立系データ収集開始

JPO書店マスタ管理センターは、従来の取次ルート経由書店では実態が捕捉できないと判断し、独立系書店の情報収集を2024年に開始

2025年10月には 独立書店ネットワーク(約90社加盟) が発足。出版社との直接仕入交渉を開始、従来の取次依存構造への対抗軸が生まれた。

JPO年間新規開店57〜94店 vs 独立系100+店/年

独立系だけでJPOの公式新規開店数を超える。既存の統計が業界の実態を捕捉できなくなった証拠。

代表的な独立系書店

Selected Indie Bookstores — Tokyo / Kansai / Local

2016
Title
東京・荻窪
店主 辻山良雄(元リブロ店長)。第3波の象徴。書籍+カフェ+ギャラリー。「人」と「本」を結ぶイベントが収益柱の一つ。
2015
誠光社
京都・河原町丸太町
店主 堀部篤史(元恵文社一乗寺店店長)。出版社直取引・テーマ別棚編集で既存の粗利構造に挑む象徴的存在。
2012
本屋B&B
東京・下北沢
内沼晋太郎+嶋浩一郎。ほぼ毎日のイベントが収益柱。「本を売るだけでは食えない」前提で業態設計。
2013
双子のライオン堂
東京・赤坂
店主 竹田信弥。選書専門店。2026年末に閉店予告中 — 独立系も「持続可能性の試練」は避けられない。
BOOKSHOP TRAVELLER
東京・祖師ヶ谷大蔵
和氣正幸店主。シェア型棚方式を早期導入。BOOKSHOP LOVERメディアと連動、独立書店の情報集積ハブ。
1975
恵文社 一乗寺店
京都
独立系書店の源流。世界的にも注目される選書と店舗空間。京都の独立系ブームの出発点。
READAN DEAT
広島
地方独立系の代表例。選書+器+コーヒーの複合業態で全国から客を呼ぶ。
本屋ルヌガンガ
高松
四国の独立系。瀬戸内・アートブック文脈と結んだ品揃えが特徴。
汽水空港
鳥取
人口の少ない地方都市で独自色。古書+新刊+カフェの地方独立系モデル。

※ 他にホホホ座(京都)、Calo Bookshop(大阪)、古書ほうろう(千駄木)、SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(渋谷)、ひなた文庫(秋田)等多数。新業態は「本屋+カフェ」「本屋+ホテル」「本屋+離島」「本屋+料理」など多様化。

05 New Formats — Shared Shelf, Unstaffed, Curated

シェア型書店は 全国132〜139店、47都道府県全てに分布(2026年)。無人書店、ブックディレクター、選書サブスク、本屋+バー — 「棚を持ちたい個人」「24時間本に出会いたい生活者」を起点にした新業態が急速に広がっている。

シェア型書店の規模感

PASSAGE by ALL REVIEWS

2022年3月 / 神保町 / 4店舗1,000棚超

ALL REVIEWS運営、書評家・作家・編集者・読者が「自分の棚」を借りて本を売る仕組み。シェア型書店ブームの火付け役。

ほんたす ためいけ

2023年9月 / 溜池山王メトロピア / 日販+東京メトロ

完全無人・会員制の書店。スマホ入退場で24時間営業。2024年秋、あゆみBOOKS杉並にも有人・無人ハイブリッド展開。

BACH/幅允孝

2005年設立 / ブックディレクター

「ブックディレクター」という職業の創出者。六本木蔦屋書店立ち上げ、宿泊施設・公共図書館の選書。私設図書室「鈍考」(2023年開業)で1周年。

本屋+バー / 本屋+猫 / 本屋+ホテル

ハイブリッド業態の広がり

Cat's Meow Books(三軒茶屋・猫店員)、B&B(バー併設)、ねをはすHOTEL BOOK & CAFE(ホテル併設)— 本単体ではない収益モデルの多様化。

06 Structural Issues — Distribution, Returns, Margins

日販・トーハンの 取次2強で市場8割 を占め、両社とも 取次本業は赤字。書籍返品率33%・雑誌返品率48.5%という超高返品構造。書店の粗利率は22〜24%で価格競争もできず、構造そのものが持続不能になりつつある。

返品率 × 粗利率

2023-2024年実績
書籍返品率33%
雑誌返品率48.5%
書店粗利率(業界平均)22〜24%
(参考)コンビニ粗利率35%
(参考)家電量販 粗利率20〜30%

再販売価格維持制度により価格競争不可、委託制度で在庫リスクは軽減されるが返品コスト高。経産省29課題の筆頭が「粗利率を抑制する流通慣行」。

取次2強の経営状況

2024年度上期
  • 日販GHD 取次事業 営業赤字 ▲7億円本業赤字化。2025年2月にコンビニ配送から撤退、物流改革進行中。
  • トーハン 取次事業 営業赤字 ▲9億円同様に本業赤字。2025年7月から日販との書籍返品業務協業を開始。
  • 2社で取次市場の約8割紙書籍流通の要だが、物流コスト高と返品コストのダブルパンチで持続可能性に黄信号。
  • 出版市場は3年連続マイナス(2024年1.57兆円、▲1.5%)紙書籍は▲5.2%で加速、電子書籍+5.8%で下支え。
07 Policy — METI Bookstore Activation Plan

経済産業省は 2024年3月に「書店振興プロジェクトチーム」 を大臣直轄で発足、2025年6月に「書店活性化プラン」 を公表。29の構造課題を整理し、補助金・DX支援・自治体連携で書店を守る政策フェーズに入った。

経産省 書店振興PT のタイムライン

2024-2025
  • 2024年3月5日 — PT発足齋藤健経産大臣の号令でPT発足。大臣直轄、全国書店の実態調査開始。
  • 2024年10月4日 — 29の課題公表「関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)」で、再販制度、粗利率、返品率、雑誌低迷、人材不足等の29項目を整理。
  • 2025年1月28日 — 課題確定版公表パブコメを経て確定、書店業界での議論の基礎となる。
  • 2025年6月10日 — 書店活性化プラン公表武藤容治経産大臣体制で具体策を提示。補助金の書店向け拡充、DX・省力化支援、自治体との連携モデル提示。

書店が活用できる補助金

2025年時点
  • 小規模事業者持続化補助金販路開拓(EC化、イベント、チラシ等)、独立書店の主力活用先。
  • 中小企業新事業進出補助金新業態転換、カフェ併設、シェア型書店化等。
  • IT導入補助金 / 省力化投資補助金POS・EC・在庫管理DXで人件費を削減。
  • 国交省 まちづくりファンド書店リノベーション、地域拠点化。
  • 東京都 クラウドファンディング活用助成金CFと連動した書店再生プロジェクト。

自治体・民間施策

ボトムアップの動き
  • 富山県立山町(無書店自治体)2024年4月、コンビニ内に書店を設置。「本との接点をゼロにしない」自治体の実験。
  • BOOK MEETS NEXT(JPIC主催)全国書店応援イベント。出版文化産業振興財団の旗艦施策。
  • 書店応援団(ブックサプライ運営)民間による独立書店支援コミュニティ。
  • 独立書店ネットワーク(2025年10月発足)約90社加盟、出版社との直接仕入交渉を開始。取次依存からの脱却を試行。
08 Strategic Implications

「書店は絶滅する」は半分正しく、半分間違っている。取次依存の郊外大型店は崩壊、独立系・シェア型・ハイブリッドは勃興。VBがどちら側に立つかで戦略は大きく変わる。

01

独立系90社ネットワークとの卸・連携

2025年10月発足の独立書店ネットワークは 取次非経由の卸チャネルを欲している。独立系は棚数が少ないため回転重視=VBの選書力・小ロット・オンライン在庫との相性が良い。買取→独立系書店への卸 はVBにとって新収益源。

02

無書店自治体の「本との接点」補完

無書店自治体27.9%=国民の書籍アクセス機会損失。オンライン買取→オンライン販売は物理空白の補完として社会的正当性あり。富山・立山町のコンビニ内書店モデルとの連携、地方自治体との協業は補助金・PR両面で有利。

03

シェア型書店棚オーナーのコミュニティ戦略

シェア型書店132店、棚オーナー延べ数千人 — 「本を売りたい/語りたい個人」のプール。VB買取の高次化版(個人棚オーナーが選書して売る)、VBのコンテンツ(積読チャンネル等)の読者層と完全に重なる。コミュニティ戦略の起点。

まとめのナラティブ

旧来の書店生態系(取次依存・郊外大型店・チェーン)は崩壊している。だが本屋文化は絶滅せず、独立系・シェア型・ハイブリッドという新しい形で年間100〜130店ペースで生まれている。無書店自治体27.9%独立系100店/年の新規開業は、実は同じ現象の表裏 — 本を届ける仕組みが、取次の大動脈から、人の手のネットワークへ置き換わりつつある